加藤木氏13代までの事蹟

 

加藤木氏10代までの事蹟

わが加藤木氏の先祖も徳川家の権力下に服属し佐竹の有力な家臣として家格も認められ5代河内より7代七衛門に至る間代々庄屋を命ぜられた。

前述の加藤木4代の主計が定住するようになった今の仲丸城坪は当時中丸内といい後仲丸木と呼ばれ近世になって仲丸城といわれているが城とは柵の事で「とりで」を意味しておりこの地名の起りは地形上から生れたらしい。

東南北の三方が谷で囲まれ溜池が二つもあって自然の要害の地でもあった。大岩坪台地の南端の涯上には馬篭(まごめ)氏といわれた先住者がいて栄えていたというから加藤木氏は誰も住んでいなかったこの仲丸城の地を開拓して住むようになったと察せられる。この馬篭氏がどの位永住していたかについてはわからないが、「馬篭(まごめ)」が訛って「孫根」の地名が生まれたともいわれ今に残ったが興味深い話である。

その間の7代七衛門の時には桐内坪に一軒、8代五右衛門の時には仲丸内に一軒分家を出し一戸前の田畑を分与して加藤木氏の繁栄の基礎造りをはじめた。しかし只10代一郎衛門は火災にあい家屋を全焼したからこれより以前の位牌、記録等はすべて消失しているので確かなことは不明である。

やがて孫根地内肥沃地の大半は加藤木氏の専有となり畑では古内前より谷津平、仲丸城、桐内、梶内、戸内、大岩に及び水田では前峯、谷津平、下田、松下、松合、国神等を所有していた。今ではかなり所有者が変っているが時の流れにより致し方のないことである。

 

11代加藤木利兵衛

加藤木本家11代は通称利兵衛で今より凡そ260年前の人である。現代の加藤木家累代の墓石のわきにある「南山寿翁信士」正徳3年歿と刻まれておるこの墓碑は本家に於て最も古いものでその前の代に火災にあっているから今の本家の家屋はこの人の代に造られ、約300年近いものと思われる。
この代になって中断されていた庄屋の役も元に復し家も新築したが今ある住宅はその後改築された部分も多少は見受けられる。

 

12代加藤木治左衛門

12代は通称治左衛門といって、本家の中興の祖ともいわれ元文4年(1739)歿、法名「深玄良照信士」であり、妻は寛延3年歿、法名「紫雲亮紅信女」といった。この人は人望厚く、家業の製紙問屋を手広く営み蓄財も多く、勤勉よく家を整え庄屋をつとめ65才で亡くなり、小谷戸の新墓地に埋葬された最初の人であるから今を去る240年前で現在の墓地の杉、檜の樹齢も約同じ年代のものであることが証明される。

 

13代加藤木半兵衛

13代は通称半兵衛といって父治左衛門以上の勤勉家であった。妻を高久の掛札氏より娶り夫婦ともよく働き家業の製紙及び として財を成しこれを資本として他より酒造株50石を買い受け酒の醸造販売と味噌造りを兼ね始めた人である。この酒株については徳川時代の酒造株は酒林株ともいって幕府の直轄となっていた。つまり何国何郡に米何千何百石と定められそれの範囲内の醸造が許可されその酒の販売は郡内だけに限られており当時としても重要な産業の一つとして監督もきびしかったという。
国税(幕府)は最初米一石あたり金三両だったから上納金は150両となり郡奉行を通じて納めていたことがわかる。
現在取り払ってしまった酒倉をはじめ糀室(こうじむろ)等の建物が並び、酒樽や諸道具等今でも一部残ってある。酒造りの仕込水は、初め高野川から汲み上げていたが、後になっては裏山の溜池近くに井戸を掘って用いていた。この水は良質の湧水なので今でも立派に役立っている。この酒造りは幕末天狗書生の乱まで約100年間つづき、本家が孫根の「さかや」と呼ばれているのはこのためである。
この半兵衛の時代、宝暦、明和の頃は各種の産業が隆盛を極め、孫根、岩船、北方、観世音村では製紙業、刻み煙草の製造は錫高野、高久、小勝、古内、大山、穴沢、赤沢、粟、圷、下江戸、小場、伊勢畑、野口村等広範囲にわたって盛況を呈し、秋11月より春4月頃までは毎月3回舟積みが行われかなりの量の紙と煙草が売り出された。
尚大規模に経営する家では、職人を常雇していたので村の人口も多くなり、米、味噌、酒、醤油等の消費も伸びて毎日のように行商の魚屋も入り、呉服商人も来て村々は活気にあふれた。この産業も次第に不振となったのは残念なことであった。
このような時代を背景にして半兵衛は家業に専念し本家の財産の基礎を固めたり庄屋の役も立派につとめた。
4人の子供のうち長女を西隣(弥宅)に嫁がせ、次、三男をそれぞれ分家に出し応分の土地と家とを与えた。
墓地も小谷戸に移し替えて業績の多かった事等を考える時夫半兵衛の質素、勤勉と相待って妻の内助の功の大きかったことが伺われる。
半兵衛は安永4年(1775)75才歿、法名「泰嶽林安清信士」。妻は夫におくれること11年天明5年80才歿。法名「泰室妙隆清信女」。両人共に小谷戸の墓地に埋葬されている。

 

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最終更新日: 03/05/04